第3章 科学技術システム改革

1. 人材の育成、確保、活躍の促進

(1) 個々の人材が活きる環境の形成

1  公正で透明性の高い人事システムの徹底

評価基準は分野や目的ごとに現場にあわせた設計を必要とする。画一的な基準やシステムでよしとせず、システムの合目的性について特に注意を要する。
2  若手研究者の自立支援

研究者が自立して活動するには、研究支援者の充実が必要である。テクニシャンやラボマネージャー、広報や特許担当者の地位の確立と雇用の安定を推進すべきである。

また健康保険、雇用保険等の労働条件は任期や職種の別に関わらず同一労働同一条件を徹底すべきである。
教授に集中する人事権や単位認定権を見直し、第三者の評価、評価の透明化を徹底すべし。アカハラセクハラの温床となり人権問題あり

研究者が自立して活動するには、研究者の育成コストの充実も必要と思われる。企業の研究開発部門のみならず公的研究機関までも「即戦力ある人材」を求める傾向にあると思われる。これは本来、雇用者が行なうべき研究者の為の育成コストの負担を、研究者ないし他(企業、研究機関、大学等)に転嫁しようとする発想、みたいなイメージも受ける。

3  人材の流動性の向上
単なる場所の流動性ではなく、むしろ研究、開発、知財、ビジネス、政策など分野間の移動をスムーズにするための研修制度やフェロー制度を充実すべきである。
4  自校出身者比率の抑制
抑制のための罰則ではなく、移動した際の褒賞という形式をとるべきである。

5  女性研究者の活躍促進

研究職における生活環境と雇用の安定なくして、女性研究者の活躍を語るのは無意味である。短期契約で各地を転転とする生活で育児や家庭生活が円滑に営めるわけがない。これは根本的な問題である。

6  外国人研究者の活躍促進

7  優れた高齢研究者の能力の活用

権力者としてではなく、研究界をまとめる潤滑油、ファシリテーターとしての役割を特に期待する。独立心の強い研究者達をまとめて意見集約できるのは、円熟し経験を積んだ年配の研究者のはずである。
(2) 大学における人材育成機能の強化

1  大学における人材育成

どういう人材をどういう目的で育成するのか、画一的ではなく大学や学部ごとに具体的かつ明確に定義すべきである。そしてそのミッションと整合性のあるカリキュラムが設計されなければならない。

2  大学院教育の抜本的強化
人材の安定的供給なくして教育の強化はできない。教育における教員のインセンティブシステムもなく、教育を専門とする人材の育成も行っていない。このままでは抜本的強化は不可能である。

3  大学院教育の改革に係る取組計画の策定


4  博士課程在学者への経済的支援の拡充

グローバルに優秀な人材を獲得するために、欧米並みの水準にすべし。大学院は基本無料、給料は200万以上を目安とする。独立した生計が立つ支援でなくては意味がない。
(3) 社会のニーズに応える人材の育成

企業ニーズに合わせた大学院教育、インターンシップのカリキュラム化、大学院卒業生の就職実績に応じた大学院の経営評価の導入、など。
起業や独立系資格、NPO運営などの多様な進路を可能にする社会的スキルの養成と支援のシステムを特に求める。

1  産学が協働した人材育成

産業側から指示や要求を出すのみならず、それに見合った資金と労力を出し合わねばならない。

2  博士号取得者の産業界等での活躍促進

年齢差別の撤廃と、大学院レベルでの基本的ビジネススキルの補強を行う必要がある。

資源や医薬などの高度知識集約型産業においては、各自バラバラに動いているだけでは大きなリターンは見込めない。ある程度の多様性は確保しつつも、日本の強みを活かせる具体的EXITに向けた、一点突破型のシステム構築、人材育成も必要である。この際、必ずEXIT側から構築しなくてはならない。上流だけ肥大しても社会的貢献にはうまくつながらない。

公的機関から民間へ仕事を依頼する場合に,会社の技術力の評価指標として博士号も考慮してはどうか。そうすれば民間企業が博士を雇いやすくなるし,さらに仕事のレベルも上がるものと期待できる。

3  知の活用や社会還元を担う多様な人材の養成

(4) 次代の科学技術を担う人材の裾野の拡大

1  知的好奇心に溢れた子どもの育成

博士人材の活用に活路がある。生々しい研究体験やサイエンスの奥行きを伝える人材を学位取得者からOJTで養成し、初等中等教育現場で力を発揮させる。秋田県の取り組みを特に参照すべきである。

2  才能ある子どもの個性・能力の伸長

2. 科学の発展と絶えざるイノベーションの創出

イノベーションとは新技術新発見のことではない。発見や技術やシステムが社会に新たな価値を提供することである。したがって社会と乖離した研究にイノベーションは存在しない。
ただし、基礎研究の価値はイノベーションだけではない点には注意を要する。

社会的価値を考えれば、科学的思考力の普及そのものがイノベーションともいえる。高度教育人材の育成と雇用に注力すべきである。
(1) 競争的環境の醸成

競争的環境と同等以上の資金と労力を、協力的環境の醸成にも注ぐべきである。科学技術の社会的適用、現代における複雑で巨大な問題の解決にはあらゆる分野、研究者間の協力的努力が不可欠である。
分野横断的なシステム研究においては、テーマの重複などもある程度許容できる柔軟な資金供給が必要である。分野別以外に、目的別の研究資金をも用意すべきである。
1  競争的資金及び間接経費の拡充

2  組織における競争的環境の醸成

3  競争的資金に係る制度改革の推進

(2) 大学の競争力の強化

1  世界の科学技術をリードする大学の形成

世界をリードするには、世界に先駆けたビジョンがなくてはならない。海外ビジョンの後追いではリーダーシップをとることは出来ない。
日本発、世界の未来に向けての具体的な意志と提案が必要である。もちろん、そのビジョンに対する合目的なシステムが設計されねばならない。

2  個性・特色を活かした大学の活性化

(3) イノベーションを生み出すシステムの強化
システムを支える人材育成とその雇用をまず第一に用意すべきである。不安定雇用で持続的システムを運用することは不可能である。

1  研究開発の発展段階に応じた多様な研究費制度の整備

2  産学官の持続的・発展的な連携システムの構築

分野や部門をつなげるファシリテーションのプロフェッショナルを育成すべきである。専門化の進んだ現代において多分野連携はそれ自体が大きな仕事である。

成果を上げるには,産と学が対等に付き合える環境が必要。「大学等における民間企業からの研究費受入額の大幅な増加を目指す。」とあるが,逆に大学等の公的研究機関から民間へ共同研究の協力を要請する場合,民間へ研究費を支給する仕組みも作るべきである。
民間も含めた人材データベースを構築してはどうか


3  公的部門における新技術の活用促進

4  研究開発型ベンチャー等の起業活動の振興

30代40代の若手技術経営者の育成と登用を推進すべきである。アカデミシャンとしての行動原理が確立していると、ビジネス経営には不向きな場合が多い。ベンチャーにおいて必要なのは製品であり論文ではない。
現在行われている大学内の起業支援はベンチャーに偏っていて,大学側の期待が大きすぎて,起業する側にとってハードルが高すぎる.大学で得た知識や技術,経験を生かした起業なら,研究開発型ベンチャーに限定する必要はない。もっと多様な起業も想定して,支援すべきである。



5  民間企業による研究開発の促進

(4) 地域イノベーション・システムの構築と活力ある地域づくり

1  地域クラスターの形成

2  地域における科学技術施策の円滑な展開

(5) 研究開発の効果的・効率的推進

地域の特質を十分に吟味し、住民の生活に適応し、地元の雇用を取り込んだ持続的システムを設計する必要がある。孤島のように「浮いた」クラスターを作っても機能しない。
1  研究費の有効活用

2  研究費における人材の育成・活用の重視

研究機関における技術員、管理員の地位と雇用の確保が重要である。研究費からの短期雇用では人材の育成と確保は不可能である。
3  評価システムの改革

(6) 円滑な科学技術活動と成果還元に向けた制度・運用上の隘路の解消

3. 科学技術振興のための基盤の強化

(1) 施設・設備の計画的・重点的整備

大型にこだわらず、分野を越えた施設、設備、機器の共同利用・活用を推進すべきである。そのための管理、ファシリテート人材の育成と雇用が必要である。分野融合や技術の社会還元には不可欠の方策と考える。

1  国立大学法人、公的研究機関等の施設の整備

2  国立大学法人、公的研究機関等の設備の整備

3  公立大学の施設・設備の整備

4  私立大学の施設・設備の整備

5  先端大型共用研究設備の整備・共用の促進

(2) 知的基盤の整備

1  知的基盤の戦略的な重点整備

2  効率的な整備・利用を促進するための体制構築

(3) 知的財産の創造・保護・活用

特許審査官の拡充と大学知的財産部門への雇用拡大、積極的に研究の知財化を進める目利き人材育成のシステムとポストが必要である。
今後特に重要になると考えられるヘルスケア産業においては、治験等の審査システムの迅速化と精密化が急務である。それにあたる人材の育成と雇用を早急に創出しなくてはならない。
(4) 標準化への積極的対応

(5) 研究情報基盤の整備

オープンアクセス化を推進する。市民が比較的安価で論文情報等に触れる機会を提供する。このことにより、市民が科学技術や政策を評価したり、あるいは市民自らが研究を行うなど、市民科学の推進につながる。

(6) 学協会の活動の促進

(7) 公的研究機関における研究開発の推進

4. 国際活動の戦略的推進

(1) 国際活動の体系的な取組

(2) アジア諸国との協力

(3) 国際活動強化のための環境整備と優れた外国人研究者受入れの促進